世界の技術を支配するベル研究所の興亡
前回お約束したように、かつてのベル研究所がいかにすごい発明で世の中を変えたかを紹介します。
私がこの事実を知ったのは、この本を読んだからです。
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「世界の技術を支配するベル研究所の興亡」
まるでベル研究所が裏から世界中の技術を牛耳っているかのような、少々オカルトちっくなタイトルですが、内容は至ってまじめな本です。
2013年に出版されたこの本を読んで、私はベル研究所の功績とそこに集った人々の天才っぷりに驚愕しました。
この本にはベル研究所が作りだした発明の数々と、イノベーションを意図的に起こそうとして起こした男の活躍が描かれています。
ベル研究所の主な発明は下記です。
・トランジスタの発明
・デジタル情報理論の確立
・レーダーの開発
・実用的な太陽電池の開発
・通信衛星の開発
ベル研究所における画期的なこれらの発明がなければ、現在私たちが当たり前のものとして使用している、スマホ、携帯電話、パソコン、GPSなどは実用化していなかったでしょう。
特に重要なのはトランジスタの発明です。
これがなければ、現代のエレクトロニクス産業は全く成り立ちません。
同様の機能を果たすものとして真空管がトランジスタ以前より存在していましたが、信頼性、大きさ、価格、耐久性などの面で発展の望めないものでした。
今現在、トランジスタはスマホで数千、車では数万個も使用されています。
真空管では絶対に代用できません。
トランジスタの発明が現代のエレクトロニクス産業という世界を拓いたといっても過言ではないでしょう。
トランジスタ以上に私が驚いたのは、デジタル情報理論の確立とその立役者についてです。
その主役は、クロード・シャノン。
この人はとんでもない天才です。
シャノンの主な成果を並べると下記のようなものがあります。
・デジタル情報理論の確立
(情報を定量的に扱う理論。情報の単位をビットとしたのもシャノン。)
・標本化定理の証明
(アナログ信号をデジタル化する時に、どの程度の間隔でサンプリングする必要があるかを表す定理。サンプリング定理とも言われる。)
・暗号についての数学的分析
・データ転送における誤り符号訂正などの実用理論確立
・評価関数に基づいたミニマックス法によるチェスプログラムの作成
(現代でも使用される考え方の原典)
技術系の方ならば聞いたことのある単語がいくつか出ていると思います。
電子工学、ソフトウェア、数学と幅広い分野にまたがる成果です。
電子回路で情報を扱ったり、情報を数学的な計算可能なものとしたり、情報を処理してベストな成果を得るための論理(ソフトウェア)を構築したりと、分野の垣根など全く感じさせない活躍ぶりがいかにも天才だなと感じさせてくれます。
この人はいかにも天才という人で、自分の興味を持ったことにはとことん突き進むが、それ以外は面倒臭がってぜんぜんやらない、役に立たないものでも必死に取り組む、人と打ち解けることがあまりない、と非常に独特の感性をもった人でした。
トランジスタについては、当時他の研究機関でも盛んに研究されていたので、ベル研究所でなくても数年後に他の誰かが発明していた可能性がありますが、シャノンの成果はほかの誰かが成し遂げようとすると数十年かかったのではないかと言われており、それだけ時代を早める重要な成果だと言われています。
さて長々と書いてみましたが、大変申し訳ないことに私の文章力では十分に魅力を伝えることができません。本当に申し訳ありません。
AT&Tは通信の独占企業として莫大な利益を得ていたからこそ世界中から天才を集め、ベル研究所において途方もない成果を生み出すことができましたが、最終的には独占企業の弊害が目立ち解体されてしまいました。
このあたりの散り方もこの本には書かれており、よくできた劇を見ているようで面白いです。
ベル研究所に興味を持たれた方はぜひこの本を読んでみてください。
特にシャノンに関する部分を読んでいただきたいと思います。
天才過ぎて、「コイツ頭おかしいんじゃないか?」「どんな発想してんだよ!」と感じるはずです。
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